やぎさわ便り八木沢里志 公式サイト

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2025.01.29 Wed.

文学は癒しになるのか

『森崎書店の日々』のロシア版の献本をいただいたので、写真を載せておきます。

ロシアの情勢について偉そうなことなど言えない身ですが、苦しい思いで過ごしている方もいると思います。そんな方のところに届いてくれること、そして少しでも明るい気持ちになってくれることを願っています。

これで何カ国めの翻訳出版かな?遠く離れたロシアの地で、自分の本が出版されているというのはとても不思議な気持ちです。

そのように、僕の作品もありがたいことに世界中で読んでもらえているのですが、3月に登壇する予定のある対談イベントのテーマが「なぜ今、国を超えて文学に癒やしが求められるのか?」になったそうです。

今世界中で癒し系の小説が読まれているというのは、僕もよく耳にします。なぜなんでしょうね?個人的にもとても興味のあるテーマです。

「世の中が慌ただしく、しんどいことばかりで、多くの人が癒しを求めている」とか「コロナ禍を経験したことで、人とのつながりやあたたかさを求める人が増えた」とか説明することもできそうですが、それが全てかといえば、違うような気もする。

とはいえ、今はそうしたストーリーや世界観が世界中で受けているわけですが、これが一過性のブームになるか、ずっと続くかは、おそらく誰にもわからないことな気がします。

でも、そうしてブームが過ぎ去ったからといって、自分は癒しの作品を書くのをやめるかといえば、そんなことはないんですね。たとえ、もう世の中にそっぽ向かれても、誰も必要としてくれなくなっても、オファーが来なくなっても、やっぱりそのテーマを書き続けるんだと思います。

なぜなら、僕は自分がそういう小説を必要としているから。自分のために作るという姿勢は、創作をする上で何よりも大事なことだと思います。

そういうわけで、世の中や世間がどんな流れになっても、自分は癒しの小説を書き続けていこうと思うわけです。たとえ、世間のブームから外れようが、それはそれ。根っこの部分では、自分には関係ないのです。

そんな小さな決意も秘めつつ、これからも良い小説を書いていきたいと思っている今日この頃です。

2025.01.27 Mon.

深刻でなく真剣に

今日も猫たちは朝から元気。生きているといろいろありますが、猫たちを見ていると癒されます。

なにしろ猫って真剣に生きている。自分が幸せでいるために、心地いいと思えるように、いつもすごく真剣に生きています。欲望に正直といえばそうかもしれないけれど、人間と違って猫の欲は生存するために一生懸命なんだね、という気がします。

ご飯ちょうだい!と必死にアピールするのも、甘えさせてというのも、一緒にあそぼうというのも、すごく真剣に伝えてきます。そういうところが、なんか癒されるのですね。

そういえば、僕のモットーに「深刻にはならず真剣に生きよう」というのがあります。たぶん、何かの本で読んだ言葉を気に入って心にとどめたと思うのだけど、何で読んだかは忘れても言葉だけは覚えています。

自分はいろいろなことをつい深刻に捉えてしまうところがあるんです。人間関係だったり、自分の生き方だったり、あるいは創作に関しても。「ああしなきゃ、こうしなきゃ。こうじゃないとバカにされる。誰かをガッカリさせてしまう」とか、誰かから強要されたわけでもないのに、物事をすごく真面目に考えてしまう。

でも深刻に考えているときって、視野が狭くなって、自分主体でしか物事を考えられなくなっている状態なんですよね。だから、すごく狭い可能性の中で判断してしまってあとで後悔したりする。

「深刻」と「真剣」は、似ているようで全然違う気がします。深刻が眉間に皺を寄せて自分に厳しく生きるイメージに対して、真剣は前のめりに、ただ人生を全力で生きる感じ。

真剣は肩に力は入っていないし、いろんな可能性や他者も柔軟に受けいれる。集中して物事に取り組んでいる。でも、失敗しても間違っても深刻なダメージは受けない。

とか言いつつも、気がつけば自分はしょっちゅう肩に力が入ってしまうんですね。で、すごく狭い世界の中で人や物事を評価してしまって、しばらくして気づくという。

そんな時こそ、猫を観察するのがいいですね。猫は真剣に、今この瞬間を生きている。けれど、究極的にリラックスして、物事を柔軟に受け入れている。

ああ、そう、「深刻にはならず真剣に生きる」ってこういうことだよね。

2025.01.26 Sun.

ジウ無双

今日もジウは元気に近所をお散歩。

基本的にすごい強気の態度なので、臆することなくガンガンどこでも歩いていきます。(とはいえ、僕がすぐそばにいるからで、ひとりだったら外なんて行けない子ですが)

それはワンちゃんが前からやってこようと関係なし。今日は散歩中のラブラドールの子が前から来たのだけど、ジウは「ワオーワオー」と鳴きながら迷うことなく近寄っていきました。

困惑したのは、相手のワンちゃん。ジウの5倍くらいはある子だったけれど、もともと怖がりな子だったようで、ジウが何も恐れずに近づいていくと、後退りして飼い主さんの後ろに隠れてしまいました。

それでもちょっと勇気を出してジウの匂いをクンクン嗅いで、「やっぱりワンコじゃない!」となったらしく、怯えてしまった。「いつもの犬たちの匂いと違うからびっくりしゃったみたいです」と飼い主さん。いや、こっちこそ驚かせてすみません。

にしても、本当に怖いもの知らずで無双感たっぷりで近づいていくので、飼い主のこっちはけっこうヒヤヒヤします。大抵なおとなしいワンちゃんだけれど、中には気の荒い子もいるから。ジウが近づいていく後ろで、こっちはすぐに抱き上げられるようスタンバイしている羽目に。

もう何年も前だけど、一度興奮してしまった柴犬に襲いかかられたことがあって、その時はこっちも本当に焦りました。すぐにジウを抱き上げたものの、それまでにけっこう地面に倒されて覆い被さられていたので(さすがに向こうも噛んではこなかったけれど)。

その時はジウもさすがに怖かったらしくて、しばらくずっと尻尾がたぬきみたいに膨れっぱなしでした。しばらくは散歩にも行くの嫌がってたな……。

今ではそんなことがあったことなどすっかり忘れて、また臆することなく近寄っていくジウ。勇ましくてかっこいいけど、相手のワンちゃんが引くのでやめてほしいです。

2025.01.25 Sat.

マイブームはたい焼き

最近、うちの近所のできたたい焼き屋のたい焼きにはまっています。

たい焼きって、2種類のタイプがありませんか。1つは生地が薄皮でカリカリのタイプ。もう1つは生地がホットケーキのようにふわふわなタイプ。

以前よく食べていた湯島のたい焼き屋さんのはカリカリの薄皮だったのだけれど、近所にできたお店はふわふわタイプ。「カリカリが好きなんだけどなあ」と思いつつも、妻と一緒に食べてみたら、「ふわふわもいける!」となって、それからよく食べています。

というわけで、今日も食べました。一番のお気に入りは、紅はるかの餡の入ったたい焼き。芋の控えめでやさしい甘味と、ふわふわの生地の相性がすごくいい。出来立てだと、手に持っているだけでそのあたたかさと一緒に幸せな気持ちが伝わってきます。うん、冬のたい焼きはいいですね。

ところで、写真は最近献本をいただいたばかりの、イギリスで去年の年末に刊行された『森崎書店の日々』の特別版。『森崎〜』と『続・森崎〜』の2冊が1冊にまとめられています。

ヨーロッパではホリデーシーズンに家族や友人に本をプレゼントすることが多いそうで、その時期に特別仕様という形で刊行されました。ありがたいことです。

ちなみにこの本、限定版として1000冊のサイン本が作られたのです。去年の夏くらいに、それはもう必死になってサインしたのを覚えています。1000冊にサインってなかなか大変です。家で妻に協力してもらいながら、寝る間を惜しんでサインしました。現地のみなさんに喜んでもらえたなら、そんな苦労も吹っ飛びますけれど。

あと写真に体だけ写っているのは、ジウさん。写真撮影していると、いつも近くに寄ってきて「なんだ、なにしんてだ?」と邪魔してくるのです。あるいは本人は応援のつもりかもしれないですが。

まあそれはともかく。とりあえず、我が家ではしばらくたい焼きブームが続きそうです。うまうま。

2025.01.23 Thu.

美味しいほっけ

今日の夕飯は、ほっけでした。去年のふるさと納税の返礼品に注文したのが先日届いたのですが、その量が想像の3倍くらいの量で、これはどんどん食べていかないと!となりまして。

我が家ではあまり魚を食べないのですが、塩焼きにしたほっけは大変美味しかったです。脂ののった身がぷりぷりに詰まっていて、食べ応えも申し分なし。出汁醤油をかけた大量の大根おろしとの相性が抜群。

きのこの炊き込みご飯と味噌汁もつけて、それだけでもう最高の夕飯。僕も妻も大満足です。

ところで、うちは、僕も妻もけっこう食の趣味が似ています。なので、何を食べるかで揉めることってほとんどありません。

前にも書いた気がするけれど、結婚相手を選ぶ際、食の好みが似ているかってけっこう重要な部分になる気がします。なにしろ、一緒に住み始めたら毎日一緒にご飯を食べることになるわけですから。そういうわけで、うちは非常にラッキーだなあと思います。

食の好みが似ていると、一緒にスーパーに行って、夕飯を何をするか相談しながら決められるのもいいですね。でも、買い物している時に、妻がいかに僕のことを信用していないのが露呈することがあります。

僕が野菜やら何やらを野菜売り場から選んで、カゴに入れるとします。すると、妻が目を光らせて、そのカゴに入れた野菜をいちいちチェックします。そして、大半の確率で自分で選び直し、僕が選んだ商品はそっと売り場に戻します。

要は、僕の目利き能力を少しも信用していないのですね。他の日常生活の中でも、「どうも信頼させてない気がする」と思うことはしばしばあります。

なので、「僕のこと、信用してないよね?」とたまに聞くのですが、「うん、いつもぼけーっとしてるから信用してない」と、身も蓋もない返事が返ってきます。ひどいですね。

でも、なんとなく言わんとしていることはわかります。僕は大体において、ぼけーっとしているので自分でもあんまり信用していないところがあるのです。

いつか妻に信用してもらえるようになるでしょうか。たぶん無理な気がします。それでもまあ、頑張って生きていきますけど。

2025.01.22 Wed.

さんぽ日和

今日はとてもあたたかい一日でした。

こんな日は、散歩に限る。ということで、昼過ぎから長い散歩に出ました。

僕は散歩に行くと、だいたい10キロくらい歩きます。と人に言うと、「そんなに歩けるもの?」とか「ストイックですね」と言われたりするのだけど、全然そんなことはなく、ゆったりしたペースでぼちぼち歩くだけなので、あんまり疲れることもありません。

歩くことの素晴らしさって、個人的には思考の整理ができるところですね。家でああだこうだ考えているよりも、歩きながら考えてる方がポジティブに考えられるし、なんなら悩んでいたことや怒っていたことも、「そんなに大したことじゃないなあ」とちょっと違った視野で見ることができます。

頭だけで考えていると、どうしても視野が狭くなってしまいがちなことも、パッと開かれていくような感じ。そして「なーんだ、深刻ぶってたけど全然大したことないなあ」と思えたり、ただ空の美しさや頬にあたる風の冷たさなんかに意識を向けていると、そもそも悩み事なんてなくなってしまったり。

僕は長いこと、メンタル不調で苦しんだ時期があるのだけど、その時は本当に毎日のように歩いていました。歩きながら、ボロボロ泣いたりしたりもよくしていました。道行く人からしたら、ちょっと怖かったかもしれない。

でも、それは確実に自分の癒しの時間になってくれた気がします。歩いていれば、いずれ必ずどこかに辿り着けます。それだけでも歩かないでじっと悩んでいるよりも、ずっと意味のあることのような気がします。

というわけで、今日も歩いてきました。最近は以前のようにあまり大きな苦しみや悩みもなく、ただただ、いい気分で歩くことが多いです。

そんなふうにいい気分で歩けることって、本当はすごく幸運なことなのだと思います。普通に暮らしていると忘れてしまうけれど、でも当たり前じゃない。だから感謝は忘れないように。

そんな心持ちで、これからもたくさん歩こうと思います。

2025.01.21 Tue.

ホース・ガール

週に4日くらいジムに行って体を動かすようにしています。そうでもしないと、根っからのインドア派である自分は全く運動しないことになってしまうので(散歩は大好きなのだけど、すごくのんびり歩くのであんまり運動している感はない)。

というわけで、今日もジムで5キロ走るのと、マシンをいくつかやってきました。ジムの日の一番の楽しみといえば、「やれやれ疲れた」と思いながら帰ってきて、リビングのソファにごろんと寝転がって20分ほど昼寝することです。

体と心がリラックスしている時にする昼寝って最高に気持ちいいです。今日も「うへえ、気持ちいいなあ」と思いながら昼寝しました。まるで天国に行くかのような心地。死ぬ時も、できればこんな感じでお願いしたいです。

人間の体って不思議なのもので、「20分で起きよう!」と思って寝ると、目覚ましかけなくても、ちゃんと20分後くらいに目が覚めまてくれます。あるいは僕だけでしょうか。いつかうっかり、数時間寝こけたりしちゃうかもですが。

ところで最近、お気に入りのバンドはホース・ガールです。このPVの曲がめちゃくちゃかっこよくて、毎日のように聴いています。

ヨ・ラ・テンゴとかペイブメントとかオルタナ系ロック好きはきっとドンピシャだと思うのです。この奇妙でピッチがちょっとずつずれていくギターリフとか、たまらんです。他の曲もいい感じにダークさがありつつ、ひねくれ感もありつつ、クセになります。キラキラさとか皆無です。

彼女たちが何者なのか実は全然知らないですが、とにかく今一番聴いております。日本にライブとか来たりするんでしょうかね。その際は、ぜひ行ってみたいけれど、世の中の情報に疎いので知った時には終わっていそうな気もします。まあ、それもまた人生ですね。

2025.01.19 Sun.

韓国版『続・森崎書店の日々』

今朝もトトは僕を起こしにきたと思ったら、案の定掛け布団の中に入ってしばらくその中でゴロゴロタイムがはじまりました。かわいいからいいのだけど、君は起こしにきてくれたんじゃないのか。

そして、そのあとでジウと散歩に行こうと家を出たら、うちの扉の真ん前に犬(?)のフンが落ちていて、あやうく踏むところでした。

おそらく散歩していた飼い主がそのまま放置していってしまったんでしょうが、家の前のはさすがに片そうよ……。日記で書くほどのことでは絶対ないと思うのだけど、まあ普通に生きてるとそんなに大きなことなどそう起きませんね。せいぜい玄関前に置かれた犬のウ○コにびっくりするくらいです。

ところで写真は、韓国版の『続・森崎書店の日々』。献本をいただいたので、せっかくなので載せておきます。なかなかポップなカバーではないでしょうか。貴子が書店の2階の部屋で本を読んでるシーンのようですね。

韓国では日本の小説が人気だそうで、僕の本も全て韓国での翻訳化が決まっていて、これからも刊行されていく予定です。韓国の読者は、僕の作品を読んでどんな感想を持つのでしょうか。楽しんでくれればいいなあと願っています。まあ、ここまで感想が届くことって基本ないですけれど。

そういえば、『不便なコンビニ』で知られる韓国の小説家・キム・ホヨンさんと3月に神保町の某書店で対談イベントをするになっています。日本と韓国のヒーリング小説の書き手の意見交換みたいな場を想定してるのかな? 

イベントについては、また詳細が決まったらこちらのサイトでもおしらせしようと思います。どんな話題が飛び出すのか、僕もちょっぴり緊張しつつ楽しみにしております。間違っても犬のウ○コの話なんてしたらダメですね。気をつけます。

2025.01.18 Sat.

朝とトト

朝はいつも必ず起こしにきてくれるトトさん。

というより、こちらが起きるのを見張っています。そして、こちらが目を覚まして上半身を越すと、「わーい!起きた起きた!」と大喜びでベッドに飛び乗ってきます。そして、一緒にリビングに行くまでが朝の儀式となっています。

でも最近は寒いからか、僕が起きて上半身を起こし、トトがベッドに飛び乗ってまでは同じなのだけど、そこからトトが僕が使っていた掛け布団にごそごそ入っていくという謎の工程がひとつ増えました。

人間の体温であたたかいのがいいのか、せっかくこっちが起きる気になっているのに、なかなか布団の中に入って出てきてくれません。

でも、布団の中でゴロゴロゴロゴロと超ご機嫌に喉を鳴らすので(トトのゴロゴロがめちゃくちゃ大きい)、なんだか引っ張り出すのも可哀想なので気が済むまでそうしておいてあげます。そういうわけで、今日も起きてからしばらくトト待ちの謎の時間が発生しました。

「そろそろ出てきたら?」とこっちが声をかけても、ゴロゴロとずっと喉を鳴らしてなかなか布団から出てこないトトさん。

君は僕を起こしにきたのじゃないのか?ミイラ取りがミイラになるとはこのことじゃないだろうか。

だいたい5分くらいすると満足して出てきます。そして、「じゃあ、そろそろリビングに行きましょうか」という顔でこちらを見てきます。うん。こっちが待ってたんだけどね。

別にいいんですけどね、なんかでもちょっと朝から釈然としない気持ちになります。

明日の朝もきっと起こしにきてくれることでしょう。そして謎のトト待ちの時間が発生すると思われ。まあいいんです。猫と一緒に暮らしている人間なんて、そんなものですから。

2025.01.17 Fri.

アバウト・ア・ボーイ

今朝もとっても寒かったです。ジウと散歩に行ったものの、ジウも寒がってすぐに家に帰ってしまいました。

普段、ジウは犬みたいには家に自分から帰ってくれないいので、途中で僕が抱っこして連れて帰るのだけど、その気になれば自力で家に帰れるのがわかった朝でありました。普段から自発的に家に帰ってほしいものですが。

こんな寒い日は、外出せずにぬくぬくとあたたかい家で読書に限ります。

というわけで、最近はイギリスの作家、ニック・ホーンビィの作品を続けて読んでいます。

大晦日の夜に自殺するために屋上に行って鉢合わせてしまった4人の間に生まれる奇妙な絆を描いた『ア・ロングウェイ・ダウン』。

破綻した夫婦生活を送っていたはずが、妻が離婚したいと切り出したことから、なぜか皮肉屋の夫が加速度的にいい人になってしまう家族の混乱を描いた『いい人になる方法』。

父親の印税で暮らす働かない主義の中年男・ウィルと、家庭にも学校にもトラブルを抱えている12歳の少年マーカスがあるきっかけでおかしな交流が生まれる『アバウト・ア・ボーイ』。

どれもとっても面白いけれど、一番好きなのは映画が日本でも大ヒットした『アバウト・ア・ボーイ』でしょうか。

ニック・ホーンビィの魅力はなんと言っても、その会話のセンスじゃないかと個人的には思っています。登場人物たちが一癖も二癖もある人たちなのに、「ひどいやっちゃなあ」なんて笑いながら読んでいるうちに、どんどん憎めなくなってくる。もちろん翻訳者の腕がいいのもあるのでしょうが、とにかく軽妙に続く会話の応酬がとても楽しいです。

『アバウト・ア・ボーイ』は20年前にも一度読んだのだけど、その魅力は今もちっとも変わらなかったです。勢いづいて映画版も観たのだけど、キザ男・ウィルを演じているヒュー・グラントが流行り役すぎて、どこから見てもウィルにしか見えないという。

この作品は原作と映画で結末部分が大きく変わるんですよね。20年前は原作の展開がどうにも地味に思えて映画版のしっかりカタルシスのある展開が好きだったのだけど、今回は映画はどうもわかりやすすぎて原作の展開の方がいいなあと思ったのでした。人間の好みって、20年で変わるものですね。

ニック・ホーンビィの本は翻訳本はあらかた読んでしまいました。まだ未訳の作品もあるので、もっと日本語版が出るといいなあと願いをこめつつ。

さて、次は何を読もう。寒い冬は読書がはかどりますな。