やぎさわ便り八木沢里志 公式サイト

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今日もまた、とっても寒い。

あまりに寒くて、お昼に妻と人気のラーメン屋に行く予定だったけれど断念。なにぜ外で並ばないといけないお店なので、さすがにこの寒風吹き荒れる中で30分とか待っている勇気が出ませんでした。

代わりにというわけでもないのだけど、映画館に行ってきました。観たのは、『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』というカナダのコメディ映画。

簡単に内容を説明すれば、「カナダの田舎町を舞台に映画が大好きだけれど自己中でナルシストで他人の気持ちを高校生の男の子が周囲でトラブルを起こしつつも、少しずつ成長していく物語」という感じ。

いけてない女子高生の日常を描いた映画『ゴースト・ワールド』と雰囲気がよく似ていて、笑いの中に人間のどうしようもなさや切なさ、そしてほろ苦さが描かれていて、素晴らしい映画でした。

なんといっても、主人公のオタク少年・ローレンスがいい。勘違いしまくりで自意識過剰、地元や地元の友人を見下しまくり。「カナダなんてダサい場所じゃなくてニューヨーク大に入学して映画を学ぶんだ」と暇さえあれば誰かれかまわず語り出す。

最低なやつといえば、最低なのだけど、なぜか憎めない。なにしろ異常にポジティブだ。それにきっと多くの大人が過去の自分と重なる部分を彼の中に見つけて、身につまされたりするんじゃないだろうか。「地元に進学するなんて絶対嫌だ。東京の大学に行く」みたいなことを考えて、周囲の人を心の中で見下してみたり。そんな若さゆえの傲慢さって、多くの人が経験しているものだと思う。

そんな彼がレンタルDVDの店長の女性との交流などを経て、ちょっとずつ変わっていく。いろんなものを失って、そして少しだけ大人になる。

彼の成長が垣間見えるラストシーンは、嬉しいような切ないような気持ちになってしまいました。彼の強烈で根拠のないナルシズムには人を惹きつけるものが間違いなくあって、それを彼はこれからの人生で失っていくんだろうなあとか考えてしまって。

もちろん、他者と協調し人の痛みがわかる人間になれる方が素晴らしいのだろうけれど。でも、そうなったらローレンスはもうローレンスではなくなってしまうんじゃないかな、とか、余計なことを考えるわけです。

なんにせよ素晴らしい映画でした。まだ今年はじまったばかりだけど、もしかして今年のベスト1になるんじゃないかな。映画っていいですね。特にミニシアター系の映画が、やっぱり自分は大好きだ!

そういえば、いつか小さな映画館を舞台にした物語を書きたいと思っているんですよね。他にも書く予定のものがたくさんあるのでいつになるかわからないけれど、構想自体はかなりできて、ひそかに書くのを楽しみにしています。

映画っていいなあ。映画館っていいなあ、と思った1日でした。

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