冷蔵庫の野菜室から、しなびかけたキャベツと、残っていたウィンナーを取り出す。
あとは玉ねぎと人参があったから、ポトフにすることにした。
煮ている間、猫が来て足元にすりすりしてくる。
湯気が立つたびに、ふと何かの光景を思い出す。
どの「光景」なのかは、よくわからない。たぶん、子供のころの安心できる何かの記憶。
ポトフが煮えた頃、テレビでは今日のニュースをやっていて、
世界は相変わらずざわざわしているらしい。
僕はポトフをひとくち食べて、
「それでも、この場所は静かだね」と猫に言った。
猫は何も答えないけれど、それでいいのだ。