朝、フライパンを出したら、前日の油がうっすら残っていた。
洗い忘れたわけではなく、たぶん「これくらいならいいか」と思った跡だ。
誰に責められるわけでもないのに、ちょっとだけ気まずい。
でもそのまま火をつけて、卵を落とした。
ジュッという音がして、フライパンは何事もなかったかのように仕事を始める。
こういうところが道具は偉い。
昨日のことを持ち越さない。
人間、というか、まあ僕のことだけど、大体前日にあったことを朝は持ち越している。
ちょっと失礼なメールとか、乱暴な車の運転をしてきた人とか。
昨日をことを持ち越しながら生きている人間としては、フライパンを尊敬する。
ともあれ出来上がった目玉焼きを見て、
「まあ、今日はこれでいいか」と思えた。
朝はいつも、完璧じゃなくていい。
ちゃんと火が通っていれば、それで合格。