朝、スリッパを履いた瞬間に違和感があった。
裏のフェルトが片方だけはがれかけて、ペロンとめくれている。
歩くたびに「ペタ、ペタ」と音がする。
たったそれだけで、なんとなく人生が間抜けに感じる。
直せばいいのに、面倒でついそのままにしてしまった。
そのうち慣れてきて、「ペタ、ペタ」という音が
ちょっとした生活のBGMになってくる。
台所でコーヒーを淹れる間、
この「中途半端な不具合」に思いを馳せた。
人も物も、完璧じゃないときのほうが、妙に愛嬌がある。
たぶん、ちょっとズレてるくらいが落ち着くのだ。
昼過ぎ、ようやく修理を思い立ち、
接着剤でフェルトを貼り直した。
静かになった足元に、少し物足りなさ。
さっきいまでのペタペタ音が恋しいなんて、勝手なもんです。